◆IL DIVO◆ 五線譜でたどる音楽の歴史 M: 16,17世紀の世俗歌曲

≪毎日がコンサート本番!≫

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Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach (Otto Hamburg) / Secular Songs of 16c. and 17c.
URL : http://papalin.yas.mu/W711/#M013

  ◇公開日: 2014年3月21日
  ◇演奏時間: 20分45秒
  ◇録音年月: 2014年3月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




オットー・ハンブルク(Otto Hamburg)著による『五線譜でたどる音楽の歴史(Music History in Examples. From Antiquity to Johann Sebastian Bach)』に掲載された楽譜を用いて演奏しています。

【M: 16,17世紀の世俗歌曲】

49. シャンソン「ひばり」 / クレマン・ジャヌカン
   Chanson "L'Alouette" / Clèment Janequin (c1485-1588)


シャンソンは、イタリアにおけるマドリガーレ同様に、16世紀フランス市民の間で最も愛好された楽曲であった。聖職者であり、アンジェの大聖堂付属歌唱学校長、さらにはパリのアンリ2世王室礼拝堂歌手でもあったジャヌカンは、280曲もの3声と4声のシャンソンを作曲している。彼は、極めて多作で独創的な、ルネサンス期フランスの作曲家たちのひとりである。「戦争」(La Guerre)、「戦い」(La Bataulle)、「鳥の歌」(Le Chant des oyseaux)といった彼の叙事詩的シャンソンは当時広く知られていた名高い作品であった。このような曲は、いくぶん素朴とも言えるのだが、同時にその無理のない自然さと写実的表現は驚くべきものである。半音階的変化音使用の増加と同時に、模倣の手法、2拍子と3拍子の交代が彼の形式の特徴となっている。ジャヌカンが「パリ楽派」の頭目とみなされるのも当然である。ここに取り上げたシャンソン「ひばり」は、ル・ジューヌが第5声を付け加えたものである。

私にとっても、リコーダー・アンサンブルの愛好家にとっても、北御門文雄さんによる楽譜でお馴染みの曲だと思います。解説の最後にある「ル・ジューヌが第5声を付け加えたものである。」に心躍らせ、新しいハーモニーによる「ひばり」が演奏できると思って楽譜を見るのですが、どう見てもこれは最初から最後まで4声です。単純に掲載する楽譜を間違えたのか、どうしてなのでしょうね。歌は確かに第5部まであります。第5部をル・ジューヌが加えたとは考えにくいし、謎です。ということで、残念ではありますが、以前(2013年)の演奏を流用させてもらいました。



50. シャンソン「愛を愛と名付けた人は誰でも」 / クロード・ル・ジューヌ
   Chanson "Quiconq' l'amour" / Claude le Jeune (1528/30-1600)


16世紀シャンソンには、プレイアード派詩人の歴史主義的傾向から生じたいわゆる韻律シャンソン(Chanson mesurée)というもうひとつ別の特殊な形態のものがある。その詩は脚韻を踏まず、ギリシャの韻律に基づいているため、主として音節の長短によるものであった。ル・ジューヌは、そのような詩に応じる音楽上の語法を探し求めた作曲家の中で最も重要であり、あの精神的・宗教的葛藤の時代に、音楽の面で人文主義を代表する人であった。ここに取り上げた「愛を愛と名付けた人は誰でも」では、音楽の構造は和音的、一方、歌詞の方は男声韻8音節2行+男性韻7音節2行の詩句からなり、どちらの詩句も最後の音節は音楽的に引き伸ばされている。詩脚は短調格(弱強格)、作曲の仕方もそれに応じている。

短い曲ですけれど、優しさに満ち溢れています。



51. バレット「おいで、いとしい女(ひと)」 / トマス・グリーブズ
   Ballett "Come away, sweet Love" / Thomas Greaves (16c. fl.1604)


16世紀最後の30年間に、イタリアのマドリガーレがイギリスに伝えられた。まずイギリスの詩人たち(シドニー、スペンサーその他)が翻訳と自作の詩で、いかにも少々気取ったものではあったが、文学の面から基礎を固めた。1588年、ニコラス・ヤングが「アルプスの彼方の音楽」(Musica transaipina)と題して外来の作品選集をロンドンで出版、その後、続々と素朴な、荘重な、あるいは牧歌風の歌詞とそれにふさわしい音楽の付いた自国の作品が生み出された。ここの取り上げた曲は、1604年にロンドンで出版された曲集「様々な歌曲」(Songs of sundrie king(d)es)中の最後の曲。グリーヴズはこの曲を「バレット」(ballett)と表示しているが、バレットというのは、極めて創意に飛んだ賑やかな5声の舞踏歌である。

出だしや中間部は、気持ちいいくらいに縦の線が揃った音楽です。リコーダー・アンサンブルで演奏するには、実音よりもやはりオクターブ上げての4フィート・アンサンブルが良いでしょう。



52. マドリガーレ「甘美な私の炎」 / コルネリス・シュイト(別名 スクティウス)
   Madrigale "Dolce mia fiamma" / Cornelis Schuyt [Scutius] (1557-1616)


ヤン・トリウス(Jan Tollius, c1550-c1603)とシュイトの作品を見れば、オランダにはスウェーリンクの他にもなお若干の天才的作曲家がいたことがわかる。2人ともイタリアで修業し、彼等の作品には明らかにイタリア音楽の影響が認められる。シュイトの5声のマドリガーレの大半は、彼の仲間たちのために折に触れて作曲されたものであるから、その仲間の洗練された趣味を反映している。

一つ前の曲とは一変して、切ない響きのする音楽です。別名スクティウスとは、自分の名前をラテン名で表記することが流行だったレオナン(レオニヌス)やペロタン(ペロティヌス)の遥か昔の時代の名残でしょうか。



53. ロマンセ「ドゥラダルテ」 / ルイス・ミラン
   Romance "Durandarte" / Luis Milan (c1500-c1562)


16世紀スペインでは、およそギターとリュートの合いの子と言える楽器、ビウエーラ(vihuela)がよく演奏されていた。『「エル・マエストロ」と題されたビウエーラ・デ・マーノの曲集』(Libro de musica de vihuela de mano, intitulado 'El Maestro')は「手弾き」(de mano)つまり指で弾くビウエーラの自習用教科書(El Maestro=教師)である。それには、器楽の「ファンタジーア」(fantasia)と舞曲の他、スペイン語、ポルトガル語による「ロマンセ」(romance)、イタリア語による「ソネット」(nonnet)も入っている。そのような歌曲の伴奏をつとめるリュートのパートは、タブラチュアで書かれ、それに対して歌のパートは、タブラチュアの中に赤色の数字で出てきたり、その上部に定量記譜法で書かれたりしている。「ドゥランダルテ」は『エル・マエストロ』のロマンセの中でも最も美しい。

ギターやリュートに似たビウエーラで弾くと感じが出そうな曲です。私がソプラノ・リコーダーで演奏しているパートが歌で、他の低い音の楽器で演奏している部分がビウエーラのパートです。歌は非常にゆったりとしていますが、撥弦楽器による伴奏の方はきびきびとしたスケールを含んでいて、音楽が活きています。



54. フロットラ「女(ひと)よ、もはや私の生命は」 / マルケット・カーラ
   Frottola "Defecerunt" / Marchetto Cara (?-1500)


イタリアでは、6世紀にマドリガーレ、ヴィッラネッラ(villanella)、カンツォネッタ(canzonetta)といったポリフォニー歌曲が広く一般に行き渡った。その先駆をなしたのがフロットラである。フロットラは、15世紀中葉、北イタリアの通俗文学に刺激されて市民と宮廷の楽しみのための即興的楽曲として生じたものであり、「謝肉祭の歌」(canto carnascialesco)と密接な関係がある。古典的なフロットラは、歌詞付きの上2または3声と楽器で奏される伴奏声部からなる3声または4声の楽曲であるが、構造的にはホモフォニックであった。一時はマントヴァのゴンザーガ家の宮廷で作曲家兼リュート奏者であったカーラは、この分野を代表する作曲家である。

普通の長調の曲かと思いきや、教会旋法のような音が入っていたりして、中世の音楽に戻ってしまったのか、あるいは私が音を間違えてしまったのかと、ひやっとする曲でした。上2声の歌のパートはオクターブ上げて演奏してもよかったかなと思います。



55. ヴィッラネッラ「森の中で」 / ルーカ・マレンツィオ
   Villanella "In un boschetto" / Luca Marenzio (1553-1599)


ヴィッラネッラは、別名「ナポリ風カンツォーン・ヴィッラネスカ」(canzon villanesca alla napolitana)としても知られる南イタリア起源の俗謡。方言で書かれていることが多い。もとは平行5度で進行する3声、後には4声、作風はつとめて素朴、リズムは活発に作曲され、そのため高尚なマドリガーレに対する一種のパロディとなっている。16世紀中葉、その様式は精妙なものになる。著名なマドリガーレ作曲家たちは、ヴィッラネッラも数多く作曲しているが、例えばマレンツィオはそのような作曲家たちの中でもことに際立っている。

これも短い曲ですが、2拍子と3拍子が入り混じっていて、誕生当時の素朴という感じとは異なったものになっていますね。



56. バッレット「楽しい人生に」 / ジョヴァンニ・ジャーコモ・ガストルディ
   Balletto "A lieta vita" / Giovanni Giacomo Gastoldi (c1550-1622)


1591年に出版されたガストルディの『歌い奏し踊るためのバッレット集』(Balletti per cantare, sonare e ballare)という曲集のタイトルからも明らかなように、このホモフォニックな作風の賑やかな楽曲は、楽器で演奏することも歌うことも出来るし、踊りにも適していた。歌詞の各節の終わりに決まって繰り返し出てくる fa-la-la という音節がひとつの特徴である。バッレットは、「スケルツォ・ムジカーレ」(scherzo musicale, 音楽的諧謔)という当時の宮廷仮面劇と、後にはマドリガル・コメディの中に取り入れられるようになったが、イタリアの他、ドイツやイギリスでも大いに人気を博した。

ほほう。ならばやっぱり鳴り物を登場させないといけませんね。和声的に少々怪しいところもありますが、楽譜を信じて、一か所を除いてそのまま演奏しました。



57. 音楽喜劇「パルナッソス山のほとりで」第2幕第1場から / オラーツィオ・ヴェッキ
   Commedia harmonica "Amfiparnaso" Act2, Scene1 / Orazio Vecchi (1550-1605)


この「音楽喜劇」(commedia harmonica)は、恐らく歌詞もヴェッキ自身が書いたと思われるマドリガル風の11の対話と3つの独白の場面を寄せ集めたもので、1594年にモーデナで初演された。独白の場面では、ここに取り上げた曲のように5つの声部が一緒に進んでいくが、対話の場面では、話の交わりを連想させるように、謂え2声と下2声がそれぞれ一対になって相い対し、そして中声がつなぎの役を果すように取り扱われている。作曲家ヴェッキ自身が「ですから、お静かにしていただいて、目でご覧になる代わりによくお聞きいただきたいのです」と前口上でレーリオに言わせているように、作品は耳から聴衆に入り込むべきものであって、演技の指定はなかったものと思われるが、この作品が舞台で上演されたことも、また確かである。

喜劇という言葉から、いかにもそういう音楽を連想していたのですけれど、どうやらこの独白の部分は全く違うようです。 『愛の妙薬』という喜劇オペラの中で最も有名なアリアが「人知れぬ涙」という郷愁を誘う歌なのですが、それと同じようなことなのでしょう。



58. アリア「彼女は永遠性は義務づけられていない」 / アーダム・クリーガー
   Aria "Ihr bleibet nicht Bestand verpficht" / Adam Krieger (1634-1666)


17世紀、ドイツの歌曲はイタリアのモノディの影響を受ける。言葉を強調するドイツの伴奏付独唱歌曲と当時のイタリアの驚くべき歌唱技巧は、ともに画期的な発展を示した。クリーガーの「アリア」の中には、イタリア風の通奏低音伴奏と器楽のリトルネッロの付いたドイツの有節歌曲とでも言うべきものがある。リトルネッロというのは、繰り返し現れる短い器楽曲のことで、それは序曲や間奏、後奏の役目をはたして情調を引き立てる。ここに取り上げたアリアには、数字付低音と5声のリトルネッロが付いているが、この他になお5つの詩節がある。このような「リート」は、当時学生たちの団体であるコレーギウム・ムージクム(collegium musicum)で大好評を博した。

数字付低音のところは、数字を音にすることはしていませんので、悪しからずご了承願います。おかげで後半のリトルネッロが5声の厚い響きとなって対比となりました。



59. 室内2重唱「遠く離れている辛さよ」 / アゴスティーノ・ステッファニ
   Chamber duet "Lontananza crudel" / Agostino Steffani (1654-1728)


室内カンタータと室内2重唱は、17世紀イタリアで新たに発展した声楽形式である。前者は、曲の長さは様々であるが、通奏低音付独唱の叙唱(recitativo)とアリアから成っている。この室内カンタータは、ことにルイージ・ロッシ(Luigi Rossi, 1598-1653)のおかげで大いに人気を博すようになったが、それは何と言っても、第一に彼が威勢の良いテーマを用いたことによる。後者は通奏低音上に2つの独唱声部が付いているもので、おそらく16世紀のポリフォニックな歌曲に見られるぴったり合った上2声が発展して出来たものと考えられる。ドイツでは、司教兼外交官であったステッファニが、オペラや宗教曲の他にそのような曲を数多く作曲した。その中には、ある部分はポリフォニックで、ある部分はホモフォニックな曲が南国の旋律と結びついて、表現の幅を広げている好例がいくつかある。

章立ても変わらないうちに、通奏低音なんていう言葉が登場してくるのが、ひとつ前の曲もそうでしたが、意外でした。音楽の特徴の種類で分類せず、西暦の世紀で音楽を区分すると、こういうことになるのでしょうか。真意が見えません。


使用楽器

   ソプラニーノ      キュング         ローズウッド
   ソプラノ         モーレンハウエル   キンゼカー
   アルト          モーレンハウエル   キンゼカー
   テナー          モーレンハウエル    キンゼカー
   バス           モーレンハウエル   キンゼカー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル



Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m


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