◆IL DIVO◆ 12: 『楽譜の歴史』 定量譜 【黒符定量譜】

≪毎日がコンサート本番!≫

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Music Gallery 2.Mensural notation - 4.Black Mensural notation (13c.-1600)
URL : http://papalin.yas.mu/W708/#M114

 
  ◇公開日: 2013年10月10日
  ◇演奏時間: 5分56秒
  ◇録音年月: 2013年10月
    上のアルファベットの曲目名をクリックして、
    Papalinの音楽室でお聴き下さい。




この時代の音楽には新鮮さがあって、随分と沢山演奏したように思うのですが、それでもまだ知らない曲が譜例として上がっていますとワクワクします。逆に知っている曲が登場するとホッとしたり。ということで、以前演奏した録音を流用させてもらったものもあります。悪しからず。


【26.2声のバラード (ギョーム・ド・マショー作曲)】

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ギョーム・ド・マショー(1300ごろ-1377)は14世紀フランスの代表的な詩人であり、音楽家でした。その2声バラードが声部別に記譜されています。下声部(テノール)は、写真の下から2行目の中ほどから始まっています。リズム記号はありませんが、セミブレヴィスを含む各音符の並び方から、4分の3拍子であることがわかります(パリ 国立図書館所蔵)。

マショーの作品に関しては、IMSLPならびにChoralWikiに掲載されているすべての曲を演奏したと思うのですが、それでもまだ知らない曲があるのですね。解読譜として掲載されているものは、現代的に言うとわずか6小節なので、全曲を演奏してみたいと思ったのですが、上の2つの世界的に代表的な楽譜サイトではみつかるはずもなく、断念しました。どこかで公開されているかも知れませんけれど、私の検索ではみつかりませんでした。

6小節しかないので、歌ってみました(まぁ、何と怠惰な理由でしょう!)けれど、6小節を歌った限りでは、マショーらしさをほとんど感じない"素直な"歌でした。




【29.カノン「夏は来たりぬ」】

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14世紀初頭イギリスの有名な<夏は来たりぬ>カノンです。写真の1行目の十字の記号にしたがって、ひとつの旋律から4声のカノンになります。さらに最下段のふたつの低声部(ベス)が加わって、計6声となります。長い音(ロンガ)と短い音(ブレヴィスの区分が明確です。ただし若干の音に加筆や修正がおこなわれているため、オリジナルの状態では長短の区別はなかったとも推定できます(ロンドン 大英図書館所蔵)。

そういう事情から、少なくとも2つの解釈が成り立ちます。3拍子系となる場合と、4拍子系になる場合です。その2つの解釈の両方を現代譜に焼き直して下さったのが、まうかめ堂さんでした。という訳で、ここでは以前の演奏を流用させて戴きます。

冷静に書かれた楽譜ではありますが、音楽に明確な喜びが登場しています。加筆・訂正した人がいたとするならば、その気持ちはわからなくもないですね。




【30.3声のバラード (マテウス・デ・ペルージオ作曲)】

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14世紀松から15世紀初頭にかけて、記譜法は極度に複雑になり、赤色や白抜きの音符、リズムの比率変化を表示する記号などを多様に使用するようになりました。これはマテウス・デ・ペルジア(?-1418ごろ)作曲の3声のバラードの楽譜で、写真の上から5段までが上声、つづいてテノール、中声部(コントラテノール、下の4段)という順序になります。各声部のリズムは刻々と変化し、複雑に絡みあいます(モデナ エステ図書館所蔵)。

この曲を聴いて戴いたら一目瞭然(一耳瞭然?)だと思うのですが、速いテンポでのシンコペーションあり、2拍3連符あり、リズムは各声部で異なってかかれている等々、作曲家のお遊び的な音楽になっています。これを演奏者である歌い手が楽譜通りに演奏して3声を合わせるのは至難のわざだったのではないかと思います。そこには、一つ前の曲である「夏は来たりぬ」のような喜びは全く感じません。一種の嫌がらせにさえ思えてしまいます。例は良くないかもしれませんが、論文を書くための論文みたいなところがありませんでしょうか。赤い音符で書かれたところも、当然意味あってのことでしょうけれど、そういうことをすること自体が、アプローチ方法が違うのではないかと思ってしまうのです。




【31.3声のバラード (ジャコブ・ド・サンレーシュ作曲)】

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14世紀末のジャコブ・ド・サンレーシュ作曲の3声バラードです。この楽譜も複雑で、いろいろの形と色の音符を動員して、シンコペーションにみちたリズムを表示しています。写真の上の3行が上声部、次の2行(歌詞の下)がテノール、下の4行が中声部です。冒頭の部分の解読譜が添えられています(シャンティイ コンデ美術館所蔵)。

サンレーシュといえば、ハープの形の楽譜が印象的です。アルス・スブティリオルの様式の作曲家で、伝えられる作品は少ないにもかかわらず、彼はアルス・スブティリオルを代表する作曲家の一人と見なされています。サンレーシュは主に、当時のリズムの可能性を発展させました。歌の内容は、主としてサンレーシュ本人とその経歴についてで、その辺りは宗教からの縛りを感じませんね。

わずか18秒ほどの演奏ですけれど、そこから浮かび上がってくる音楽は、現代音楽と肩を並べるような難解さを感じます。20世紀の音楽をなかなか理解できなかった私ですが、当時こうした音楽を聴く立場にあった人々は、一体どう感じたのでしょう。




【32.ロンドー「美しく気立て好く賢い女よ」 (ボード・コルディエ作曲)】

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フランスのボード・コルディエ(15世紀初頭)作曲の3声ロンドーの楽譜です。恋のシャンソンにふさわしくハートの形をしていて、2行目の<わが心>という歌詞まで、ハートの絵で示しています。下声部(テノール)は上から3行目、その下の2行は中声部(コントラテノール)であす。赤符(コロル)やリズム比率変化記号が複雑に使用されています(シャンティイ コンデ美術館所蔵)。

視覚的に、一回見たら忘れない"楽譜"です。これは実用的なものだったのでしょうか、それとも誰かにプレゼントするための(演奏など度外視した)装飾だったのでしょうか。私は、当時はおそらくこの楽譜で歌ったと思いますので、目的は前者だったのでしょう。しかし、実際に演奏するという場面では、読みにくくて、奏者(歌手)たちにとってはいい迷惑ですよね。歌い手はちゃんとした"楽譜"に書き直した上で歌っていたりして・・・。

コルディエの曲は、シャンティイ写本に2曲だけ収められているようですが、もう一つの曲は、円形の楽譜に記譜されたカノン形式によるロンドー《コンパスを使って完全に描かれた Tout par compas》という曲です。両方ともビジュアル系なので、それだけで作曲者の名前を十分覚えてしまいますね。




【33.3声のロンドー (ギョーム・デュファイ作曲)】

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フランドル出身のギョーム・デュファイ(1400ごろ-1474)の3声ロンドーの楽譜です。作曲者の名前のDufayの"fa"の部分を音符で表示している趣向が面白いですね。上声部、下声部(テノール)、中声部(コントラテノール、下2行)の順に並べられ、赤符(コロル)が現れます。黒符定量譜の最後の資料でもあります(エル・エスコリアル修道院文庫所蔵)。

割と長生きをしたデュファイは、中世とルネサンスの音楽の橋渡しをした人で、自身の音楽も、若いころと晩年では全く異なります。これが同一人物の作品かと疑いたくなるほどです。若いころの作品や手法をひたすら守り続ける作曲家や芸術家もいますけれど、デュファイは頭が柔らかかったのかも知れません。歳をとってからの肖像画では、頑固爺に見えますけれど。

この譜例の作品がいつ頃のものかは分かりませんが、今まで演奏してきたような13~14世紀のアルス・ノヴァや、アルス・スブティリオルの作品とは明らかに異なって、より和声的ですし、何よりも安心して聴いていられる音楽です。



楽譜は、音楽之友社のISBN4-276-38008-1 C0073を使用しました。



使用楽器

   ソプラニーノ      キュング         ローズウッド
   ソプラノ         モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)
   ソプラノ         モーレンハウエル   グラナディラ
   ソプラノ         フェール         パリサンダー
   アルト          モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)

   アルト          メック           オリーヴ
   テナー          モーレンハウエル   キンゼカー(メイプル)
   テナー          メック           ボックスウッド
   テナー          全音            チェリー
   バス           ヤマハ          メイプル
   グレートバス      キュング         メイプル
   コントラバス       キュング         メイプル

   チェンバロ       ギタルラ社        フレミッシュ・タイプ
   ギター          クラシック・ギター
   打楽器         大小ジャンベ、鐘等




Papalinの多重録音で、お聴き下さい。m(_ _)m



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