水たたえる あの目

谷川雁さん作詞、新見徳英さん作曲、男声合唱のための「あしたうまれる」。
8曲の最後は「卒業」という歌だった。終わり間際の歌詞はこうだ。

     ♪ ボッティチェルリ うまれ日 しらべてた
     ♪ 水たたえる あの目を わすれない


僕はこの歌詞が引っかかっていた。
ボッティチェルリの絵は、3枚しか知らない。
一体どの絵なのか?


あるとき、ネットでたまたまボッティチェルリの絵に詳しい方に遭遇した。
僕は喜び勇んで、あいさつもままならにまま(以前も似たようなことがあったっけ)、彼女に"この絵"について訪ねてみた。初対面の方なのに、背景の説明も不十分なまま、失礼をしたものだ。

はじめまして。
ボッティチェッリにお詳しいのですね。
飛んで火に入るとはこのことででしょか。

実は最近、とある合唱曲の「卒業」という曲を歌ってみたのですが、こんな歌詞が出てきます。

♪ボッティチェルリ うまれ日 しらべてた
♪水たたえる あの目を わすれない

さて、これは一体どの絵なのでしょうか。もしくは絵でないかも知れません。
お考えを伺えたら嬉しいです。
ちなみに、リンク先から僕の拙い歌が聞けます。

ご無礼、お許しを。


こんな失礼な書き込みに、彼女は丁寧にお返事を下さった。

>Papalinさん

ご訪問有難うございます(^^)
Papalinさんの美声拝聴いたしました♪
私、声フェチでして(笑)、よく声楽の曲を掛けてます。(今日はモンテヴェルディ♪)

歌詞の件ですけれども、明確な意味を持ったものではなく、マザーグースのような「語感」の面白さに中心をおいた「言葉遊び」のような印象を受けました。この作詞家さんの書く歌詞、他の作品もこういうテイストなのでしょうか?

ただ「生まれ日」というのは、ちょっと思い当たることがあります。ボッティチェリは、没年月日は判明しているのですが、生年月日が不明なのです。生まれ年自体2つの説があって。(我々が知らないだけで、画家本人は知ってたかもしれませんが^^;)

それから、「水たたえる あの目を」というのは、ボッティチェリの瞳のことなのかなぁ。。。
「東方三博士の礼拝」という作品の右端にボッティチェリの自画像ではないかと言われる人物が描かれていまして、この眼差しが我々鑑賞者の方を向いていて、ちょっとうるっとして悲しげな、うつろな感じにも見えるんですね。もしかしたらそのことを言ってるのかもしれません。
ボッティチェリの瞳でないとしたら、ボッティチェリの描く人物のことを指すのでしょうね。ボッティチェリの描く女性・・・特に聖母マリアの瞳は憂いをたたえたものが多いですよ。

また、「水」に関する作品といえば「ヴィーナスの誕生」という非常に有名な作品がありますので、作詞家さんはボッティチェリに対して「水」のイメージをお持ちなのかもしれないと思いました。

ご参考までに・・・
★東方三博士の礼拝
http:~
★東方三博士の礼拝 ボッティチェリ自画像部分アップ
http:~
★ざくろの聖母
http://quo-vadis.up.seesaa.net/image/madonna_della_melagrana.jpg
★ヴィーナスの誕生
http://quo-vadis.up.seesaa.net/image/pic_venus.jpg

>ご無礼、お許しを。

いえいえ、こういった謎ときは大好きです。
全て推測の域を出ないので、お役に立てたかどうか分かりませんが(笑)


とても嬉しかった。胸の痞えがすぅっと解けたような気がした。その絵はこれである。

画像


絵の右端にいるボッティチェルリの自画像を拡大してみると・・・

画像


そして、目のアップ。

画像




彼女の自説を伺って、僕は以前からもやもやっと想像していたPapalinなりのストーリーが仕上がった。それはこういうものである。


これは谷川さん自らの思春期の体験に基づく詩である。
中学を卒業する間際、美術の教科の最後の学習で、ボッティチェルリについて調べようという課題を先生からもらった。特に嬉しくはなかったが、いわれたから取り組んだ。ボッティチェルリを調べると、まず生年月日が定かでないことがわかった。『お前は自分のことなんだから、親から聞いて誕生日くらい知っているだろう。何で僕らにそのことを残してくれなかったんだ。全く困った奴だ。』そうして、一枚のボッティチェルリの絵にもう一度目をやった。先生から「これはボッティチェルリの自画像と言われているんだ。」と教わった、《東方三博士の礼拝》である。そこにいたボッティチェルリの表情は、憂いを含んでいた。悲しそうな目をして谷川少年を見返した。絵の中の彼の目には、水がたたえられているように感じた・・・。


全く幼稚な想像であり、信憑性など全くない。調べもせずにいい加減に書いている。
でも、こんな空想もあってもいいのかな・・・。そんな楽しみを一つもらった。
そして、教えてくれた彼女:Shuseiさんにお礼のコメントを送った。

Shuseiさん、丁寧なお返事をありがとうございました。
★感激しています!

歌からしばらくリコーダーの方に行ってまして、やっとこちらに伺ったところです。
★大変失礼致しました。

お返事を拝見していて、お~と驚くこと然りです。「水たたえる」に頭が行ってしまっていて、「生まれ日しらべてた」は素通りしていたのですが、そうだったのですね。Wikipediaなんかで調べればわかったかも知れませんが、それさえも怠っていた自分が恥ずかしいです。ひたすら「水たたえる」絵ばかりを探していました。
★情けないです。(^_^;)

そして、お返事を読み進みながら、今度こそ「あ、これも、あ、これも調べてみよう」と考えていましたら、最後にご丁寧にリンクまで・・・。Shuseiさんの優しさをいっぱい感じました。
★感謝致しております。

さて、水に関しては、東方三博士の絵は驚きでした。素晴しい説です。「水たたえるあの目」ですから、僕は「ヴィーナスの誕生」ではないのではないかと思っていました。なるほど、この目はかなり意図的なものを感じます。
★Shuseiさんの知識と感性、素晴しいです。

それから、作詞者の谷川さんですが、言葉遊びの感覚も持ち合わせていると思います。この曲集は、メロディが先にあって後から詞をつけたものなんです。ご指摘のような傾向はありますね。私は殆ど本を読まない無学者なので、マザーグースは知らなかったのですが、似ているのですね。
★こちらも、ありがとうです。

数々のことに、心からお礼を申し上げます。
★長々とすみません。m(_ _)m

PS:最近また多重録音をして精力的に公開しています。よろしかったら時間のあるときにでもBGMでお聴き下さい。声ではありませんが・・・。(笑)


またしても、丁寧な回答を戴いた。

>Papalinさん

Papalinさん、再コメント有難うございます(^^)
微力ながらお役に立てたようで、とても嬉しいです。

>水に関しては、東方三博士の絵は驚きでした。

この作品自体、キリストの誕生・・・つまり「生まれ」に関する絵ですものね。やっぱり関係あるかもしれないです。

・・・ちょっぴり補足です・・・

ボッティチェリはメディチ家に愛された大変才能ある画家でしたが、後年サヴォナローラという修道士の厳格な宗教観に影響を受け、その作品からは「ヴィーナスの誕生」で見られたような、煌く水面の如き輝きは失われてしまいました。作品数は激減&注文も減り、たいへん苦しい晩年を送ったようです。

東方三博士は、若い頃の作品ですが、私はあのボッティチェリの淋しげな瞳を見ていると、ボッティチェリの辛い晩年のことを思い出して、悲しくなってしまいます。
作詞家さんもボッティチェリの人生をあの瞳に見たのかもしれません・・・なんて、穿ちすぎかなぁ(笑)

Papalinさんは、歌だけでなくリコーダーも演奏されるのですね!
私、リコーダーの音も好きです。
楽譜が読めないので、自分で吹けるのは、耳で覚えたキラキラ星とグリーンスリーブスとチャイコフスキーの弦楽セレナード(スタッフ○ービスのCMの・・・)だけなんですけど^^;

お言葉に甘えて、Papalinさんの音楽、拝聴させていただきますね♪

このブログでも、時々音楽のことを書いています。よろしかったらたま~に覗いてみてくださいませ。
スターバト・マーテル(悲しみの聖母)、めでたき海の星など、美術の主題とも重なる声楽曲についてもそのうち書きたいなぁと思っています。


ありがたい。

aostaさんからは、僕のブログのコメントで、前後の歌詞や「卒業」というタイトルから受けるイメージも加味したお考えを聞けた。ありがたい。

ネットで未知のことについて知ること、意見交換すること、想像が広がること、
素晴しいと思った。

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この記事へのコメント

沙羅
2007年07月16日 15:47
ボッティチェリ、美術の教科書とか社会科の教科書に載っていましたね。
なるほど、なるほどと、読ませていただきました。
一つの事が、次々に繋がっていくのは、面白いですね。

ところで、地震大丈夫でしたか。
お昼まで知らないでいました。今3時37分も大きかったようです。こちらでも感じましたから。
2007年07月16日 23:00
イメージがイメージを呼び、奔流となって流れていく。
奔流から生まれた想像の翼は、歌の翼と一緒になって大空を舞う。
イメージの奔流を下るボートの船頭さんになりたいと、いつも願っている私です。
微力ながら、Papalinさんの「歌の翼」をさらに広げるお手伝いができたようで、とてもとても嬉しいです。
人と人との出会いから生まれる化学反応は、非金属を金に変える「賢者の石」のようなものかもしれません。

ボッティチェリの瞳の拡大図がこれまで見たものの中でいちばん大きくて吃驚しました(笑)
水をたたえてますね。間違いない!

・・・・補足の補足・・・・
若い頃のボッティチェリは、愉快で気さくな人好きのする人物だったようです。
あのダ・ヴィンチからも微妙~にライバル視されていたような天才肌の画家でしたが、稼いだお金は工房のザルに入れて吊るし、金に困った仲間が自由に使えるようにしていた・・・そんな鷹揚さもあったとか。
自画像の瞳からはちょっと想像がつきませんね。
「水たたえる あの目」との乖離。
ボッティチェリはどんなことを考えながらあの自画像を描いたのか・・・
Papalin
2007年07月19日 22:23
◆◆ 一つの事が、次々に繋がって・・・

沙羅さん、ありがとうございます。
今回の展開は、本当に面白かったです。
面白かったなんて言ったら失礼ですけど、
僕がずっと疑問を抱いていたことと、
その疑問に見事に回答してくださったFu Shuseiさんとの出会いです。
 
地震は全く気づかなかったです。(^_^;)
 
Papalin
2007年07月19日 23:57
◆◆ どんなことを考えながらあの自画像を・・・

Fu Shuseiさん、ありがとうございます。
「水たたえる あの目」には、本当に楽しませてもらいました。それもShuseiさんのブログとの出会いからでした。私以外にも、Shuseiさんのブログをご覧になっている方は大勢いることでしょう。絵画の紹介に留まらない、Shuseiさん御自身の感じた印象とか、そこから始まるストーリーに惹かれる方は多いのではと想像します。

今回は私の興味にお付き合いをして下さって、本当にありがとうございました。味をしめましたので、またお尋ねに参上するかもしれません。その際には、水先案内人をまたお願いします。
<(_ _)>