《本のレビュー》 『諏訪のでんせつ』 竹村良信 著 その3

諏訪の神さま、タテミナカタノミコトって、
優等生の神さまじゃ決してなかったんだ。

お明神さま

 諏訪神社におまつりされているのは、タテミナカタノミコトです。タテミナカタノミコトのことを、「お明神さま、お明神さま」といって、諏訪郡中の人はもちろんのこと、日本中の人から崇められています。
 お明神さまの神話をしましょう。

 昔々、神代の昔です。
 日本の国が出来始めたことのことでした。
 因幡の白うさぎのお話で知られているオオクニヌシノミコトに、男のお子さんが二人ありました。
 お兄さんの方をコトシロヌシノカミと言い、大変気立ての優しい神さまでした。
 弟のタテミナカタノミコトは、その反対に、いたって気性の荒っぽい神さまでした。この荒っぽい神さまのタテミナカタノミコトが諏訪のお明神さまです。

 高い天の上の国に、アマテラスオオミカミという、立派な神様が住んでいました。
 いつも日本のありさまを、空の上からじっと眺めていました。
「やっぱり日本の国は、私の子孫が治める国だ。」
 そうお考えになって、(オオクニヌシノミコトが収めている国を返すように)と、タケミカズチとトリブネの二人の神さまを、出雲の国に遣いに出すことにしました。
 二人の神さまは、早速出雲の国のいなさの浜におりました。長い剣をするりと抜いて、波の上に、逆さにつき立て、その切っ先の上に胡坐をかいて、オオクニヌシノミコトに談判しました。
「日本の国はオオミカミがお造りになった国だ。オオミカミの子孫がお治めになる国なのだ。どうだ。気持ちよくお返しするか。それとも嫌だというか。」
 二人の神さまは、ぐっと睨みつけて言いました。
「まことにその通りです。お言葉の通りこの国をお譲りします。」

画像 オオクニヌシノミコトはうやうやしく答えました。お兄さんのコトシロヌシノカミも、同じ考えで承知しました。
「いや。俺は絶対反対だぞ。」
 タテミナカタは、いきなりそばにあった千人もかからねば動かせない大きな岩を軽々と差し上げながら怒鳴り返しました。更に続けて、
「やい。無礼なことを言うな。俺の国へ来て勝手なことを言うと承知しないぞ。さあ、この国が欲しければ力比べでこい。負けないぞ。」
 と、言うが早いか大きな岩をどしんと投げ捨て、いきなりぐっとタテミカズチの手を引っつかみました。ところがタテミカズチの手は氷の柱になってしまい、驚いている間に、その手はまたひょいと剣の刃になったのです。タテミナカタは恐くなって、手をおずおずと引っ込めました。
「さあ。今度は俺さまの番だ。」
 タケミカズチは、タテミナカタの手をぎゅっと握りました。まるで、生え始めた葦の茎を捻じ曲げるようです。すぐにねじ切って、ぼーんと向こうへ投げつけました。
 タテミナカタは、真っ青になって逃げ出しました。
「こら。待て、待て。」

画像 二人の神さまは、どんどんと追いかけました。そして、とうとう信濃の国の諏訪湖のそばで捕まえ、一ひねりに捻り殺そうとしました。
「どうか、命だけはお助けください。決して日本の屋根の信濃の国から外へ出ません。また、お父さんや兄さんの言う通りにします。」
 と、謝りました。そして、そばにあった岩に手のひらを押し付けました。積もった雪の上に手をつけたように硬い硬い岩に手のあとがくっきりと残りました。約束の固いことを、二人の神さまの前で示したので、許されました。
 今も、そのときの手形石が上社の南に残っています。
 こうしてタテミナカタは、諏訪湖の南の岸---守屋山のふもとの神宮寺(諏訪市中洲神宮寺)に住み着きました。
 ここは諏訪の平や、諏訪湖、八ヶ岳の裾野をひと目で見渡される素晴しく眺めの良いところでした。
 それからあと、タテミナカタは家来の神さまと一緒になって、人びとに、原っぱを切り開かせ、稲や粟、野菜を作らせ、牧場を作って馬を育てさせました。また、諏訪湖の魚の獲り方や、舟の造り方などを教えました。
 奥さんのヤサカトメノミコトは、村人を集めては桑の作り方や、お蚕の飼い方、糸のつむぎ方、それに機織りなどを教えました。
 このように二人して励まれたので、諏訪の地はどんどん開けて豊かになり、平和な大変住みよいところになりました。


レビューのコーナー

諏訪大社は、全国に点在する諏訪神社の大元だそうです。旅をしていて、各地に諏訪神社がありますと、心が和むのは諏訪出身者だからでしょうか。

諏訪人は考え方が閉鎖的だといわれます。諏訪以外の地から着た人、いわゆる"よそ者"をあまり歓迎せず、ともすれば、PTAなどの役員選出でも、いいように使ってしまうような性向は、こんなところに所以があったとは・・・。信濃の国から一歩も出ないと言った神さまの気質、そのままですね。(笑)

諏訪大社上社のすぐそばにある神宮寺。この名前、面白いですね。神さまとお寺が一緒になった珍しい名前です。神仏一体・・・なのでしょうかね。

                             2007.03.11 Papalin




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この記事へのコメント

2007年03月12日 07:02
おはようございます。

逃げに逃げて、とうとうこの諏訪の地にまで逃げてきたタテミナカタノミコト、やれやれこれで安住の地を得たかと思いきや、太古から諏訪の人々に霊山としてあがめられたいた守屋山にはすでに土着の神様がいらしたようです。
「御柱」の起源とも言うべき、精神の深層に深く根を下ろしている「宿神」という、境界や裂開を司る神さまでした。
諏訪大社の歴史は、この宿神を祭る「守屋家」と新しい神様であるタテミナカタノミコトを祭る「大祝(おおほおり)家」との闘いと妥協の歴史でもあったようですね。

近々実家に参りますので「諏訪のでんせつ」発掘してまいりましょう。
小学生の頃読んだ本、古くなっていても愛着があります。表紙も挿絵もおぼえていました。
Papalinさんのブログにアップされている絵を眺めては、懐かしく思い出しています。
2007年03月12日 07:06
気になったことがあって確認しました。
神長官「守矢」であって「守屋」は間違い。
勢いでコメントしてしまい失礼いたしました。
2007年03月13日 22:18
◆◆ 闘いと妥協の歴史... aostaさん

ほほう、そうだったのですか。
神さまの世界も大変ですね。(笑)

このタテミナカタノミコトって神さま、
いかにも諏訪にピッタリって感じ、
しませんか?
2007年03月13日 22:22
◆◆ 神長官「守矢」 aostaさん

諏訪地方には、もりやさんという苗字の方が結構いらっしゃいます。字も両方あるようです。以前、守矢さんを守屋さんと書いてしまったら、とても嫌そうな顔をされたのですが、関係がありそうですね。

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